鼠が紡ぐ物語。

それはちっぽけな一匹の鼠が描く、小さな小さなお話。

今度はオレが

守るから。

 

 

エキドナとヴリドラのお話。

 

 あの子は昔からいい子だった。

両親を殺め、誘拐という形で無理やり実験台にさせられているにも関わらず、

私の身を案じ、あの笑顔を見せてくれた。

あんな純粋な笑顔は、初めて見たのかもしれない。

まるで、太陽のような___

彼の、ヴリドラの笑顔。

 

 

私はヴリドラと再会した。

20年ぶりくらいかしら…

何も、変わっていなかった。

その優しさも、あの笑顔も。

20年たっても彼は彼のままだった。

 

「…無理はしないで…姉さん」

大人になった彼は私にそう言った。

己を実験台にした組織の一員であった私を、

 

何故そこまで私のことを?

彼に聞いた。

 

「…決まってるだろ。姉さんは悪くないんだ。それに…」

 

 

「オレを救ってくれたのは、姉さんだ。」

彼はそう答えると、私を強く抱きしめた。

 

 

 

「オレが姉さんを守るから。」